【アモリ通信177:悪魔は細部に宿る】  20180912


福島清隆 さん


こんにちは。


キャッシュフローコーチ &
   リスクマネージャーの福島清隆です。
本日のテーマは「悪魔は細部に宿る」です。

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    悪魔は細部に宿る

    危機管理の落とし穴

    樋口晴彦  祥伝社

          \820 + 税

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今回は「危機管理」がテーマです。

「人は、組織は、なぜ失敗の教訓を活かせないのか
?」という課題について取り組みます。

というか、この方面で間違いなく第一人者の一人と
思われる「樋口晴彦」氏に学びます。

「誰に学ぶ、何に学ぶ」という言葉を私は常に念頭
においています。
「危機管理」「不祥事を防ぐ」というテーマなら、
まずこの人かなというのが私の現在の認識です。

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樋口 晴彦(ひぐち はるひこ、1961年2月5日 )は、
警察官僚、歴史家、警察大学校教授。

広島県生まれ。東京大学経済学部卒業。国家公務員
上級職に採用。

愛知県警察本部警備部長、四国管区警察局首席監察
官のほか、外務省情報調査局、内閣官房内閣安全保
障室に出向。

1994年フルブライト奨学生として米国ダートマス
大学MBA。

2012年「組織不祥事に関する理論的・実証的研究
経営学的視点からの考察」で千葉商科大学博士(政
策研究)。

警察大学校教授。危機管理システム研究学会常任理
事、失敗学会理事。

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同書の内容について、特に気になった点を散発的に
抜き出します。


〇「自助」の発想が不足している日本人

「日本国民はパニックに陥ることなく、冷静に対応
した」という地震等での大災害時にみられる現象は
マスコミに刺激されると、とたんに雪崩を打って動
き始める。

「みんなが始めたから」と一斉にパニック行動を起
こす可能性もある

米国人のように、銃器で武装してまで「自助」に徹
するのはやり過ぎだが、しかし日本人は、もう少し
「自助」の発想を持ってもよいのではないか。



〇 専門家はコミュニケーションが下手

その理由の第一
技術者は技術者同士で仕事をすることが多く、一般
人(つまり素人)と接触する機会が不足しているこ
と。

第二の理由
技術者はとにかく正確性にこだわることだ。
こうしたこだわりの研究者には不可欠の資質なのだ
が、リスクコミュニケーションの担当者としては不
適格である。

第三の理由
専門技術者であろうとなかろうと、日ごろから訓練
をしていない者は急場では役に立たないということ

これまで専門技術者仲間の閉じた世界でのんびり仕
事をしてきた人には、記者会見の壇上はまさに針の
むしろである。

緊張感や圧迫感が想像を絶する修羅場でいきなり引
っ張り出せば、まともに受け答えができなくなるの
は当然である。



〇 緻密すぎる計画は机上の空論
  BCP(事業継続計画)の見直しに対する4つ
  のアドバイス

その一
BCPをあまり緻密化しないこと。

日本人は生真面目なのでマニュアル類の記述をでき
るだけ詳細にしようとするが、BCPを緻密化すれ
ばするほど「机上の空論」に陥りがちである。

その二
タイムスケジュールにこだわるな。

BCPを発動するような事態はそれこそ一大事なの
だから、「計画どおりにいかないのが当たり前」と
覚悟しておくべきである。

その三
業務再開の範囲を絞り込め

緊急時は、平時よりもさらに「選択と集中」が必要
とされる。

当面は、売上の7割くらいの回復を目安として、
「その他は後回しでよいから、この製品だけは何と
しても生産を再開しよう」と対象を絞り込み、組織
のエネルギーを傾注することが好ましい。

その四
被災事業所の負担軽減を心がけよ

応援要員の派遣に当たっては、被災事業所の負担軽
減を心がけること

要員を派遣する側で宿泊場所や移動用の車両を手配
して、被災事業所側の負担を軽くしてやることをお
勧めする。


(興味深いエピソード)

東日本大震災の際、プラント関係のB社は、出入り
の業者と長期継続計画を守り続けていた。

その為、震災時には修理業者がすぐ駆けつけ、馴染
みのガソリンスタンドでは優先的に燃料を融通して
くれた。

他社がトラブルに瀕していたのとは無縁であった。

BCPをスムーズに進められるかどうかは、こうし
た下請け業者のサポートに負うことが実に大きい。

長期継続的関係の維持が若干のコスト高になっても
それを「保険料」と割り切れば算盤が合うのではな
いか。



〇 セウォル号転覆事故

・不適切な船体改造
・過積載と杜撰な固縛対策
・未熟な航海士の操船ミス
・「日本は違う」は禁物
・堅坑(たてあな)と化した通路
・寄せ集め状態の船舶職員
  チームの核となる船長は、正規の船長が休暇を
  取ったためにセウォル号に乗り込んだ契約社員
  だった。
  要するに「臨時の代役」にすぎない。
  その他の船舶職員にも契約社員が多かった上に
  晴海鎮海運の給料が低いために入れ替わりが激
  しく、半数以上の船舶職員は、セウォル号での
  勤務経験が半年以下であったとされる。
・船内に入らなかった海洋警察
・空白の7時間
  おそらく報告書を大統領のデスクの決済箱の中
  に入れたという意味なのだろう。
  形式上は大統領が執務室にいることになってい
  るので、決済箱に入れた時点で報告済みとなる
  が、実際には、大統領本人には情報が伝わって
  いなかったのである。

・公人にプライベートな時間はない
  大統領は、最高の公人である以上、プライベー
  トな時間は存在しない。
  愛人と密会していようが、風呂やトイレに入っ
  ていようが、秘書課長は遅滞なく報告すべきで
  あり、大統領はそれでよしとしなければならな
  い。
  青瓦台(韓国大統領官邸)がそうした報告態勢
  を構築していなかった点で、危機管理上の大ポ
  カと言わざるを得ないのだ。

・海洋警察の対応
・「権力者」となった被害者

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〇 最悪の状況で踏みとどまらせるもの

  東峰十字路事件の教訓
   1971年9月16日
   成田空港建設予定地内にある反対派の土地を
   収用するために、第二次行政代執行が行われ
   た。

   反対派の奇襲を受けた特別機動隊は、あっと
   いう間に四分五裂してしまった。

   3名の警察官が殉職した。死因は脳挫傷で、
   角材などで武装した反対派が滅多打ちにした
   結果であった。

・寄せ集め部隊の崩壊
  第一の教訓
   戦力を分散してはいけない
   反対派が実質的に支配する地域に孤立した形
   となり、格好の標的とされてしまった。

  第二の教訓
   準備不足で事に臨んではならない。

   特別機動隊は、当日早朝に出発し、周囲の状
   況をまったく把握していなかった。さらに、
   隊員たちが輸送用トラックから降車してすぐ
   の最も脆弱な状態な時に反対派の襲撃を受け
   てしまった。

  第三の教訓
   成田闘争のような荒れる現場に「弱い部隊」
   を投入すべきでなかった。

   特別機動隊は、刑事や交番勤務の若手警察官
   を集めて臨時編成した部隊であった。

   ただし、個々の隊員が「弱い」ということで
   はない。武術の有段者が揃っている。
   「弱い」のは集団としての話である。

・戦友意識がカギ

  戦国時代の合戦では、両軍が激しくぶつかり合
  ってる時の戦死者は非常に少ない。

  戦死者の大半は、合戦の勝敗が決まって、敗者
  が退却する時に発生する。

  東峰十字路事件における唯一の活路は、隊員が
  一丸となって反対派の中に突入し、その包囲を
  破ることだった。

  しかし、眼前に群がる暴徒や噴き上げる火柱が
  怖くないはずがない。

  この恐怖心を乗り越えるのが「俺が突っ込めば
  必ず後ろに『戦友』が続いて来てくれる」とい
  う信頼感などある。

  こうした「戦友意識」を築くには、苦楽を分か
  ち合ってきた時間の重みが不可欠なのだ。

  このことは、苦境に直面した企業にも当てはま
  る。

  経営悪化時のリストラは最悪の選択である。

  人件費の削減により財務諸表は一時的に改善す
  るかもしれないが、「次にリストラされるのは
  誰だ」という疑心暗鬼が膨れ上がり、無形の財
  産である社内の「戦友意識」を喪失させてしま
  うからだ。

  社内の1割をリストラするくらいなら、全員の
  給料を2割減らして辛苦を分かち合ったほうが
  よい。

  どうしてもリストラが避けられないようであれ
  ば、一度きりとすべきであろう。

  もしも二度目のリストラをする事態となれば、
  会社はもう終わりだと経営者は覚悟したほうが
  よい。

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樋口氏は冒頭でご紹介した通り、警察本部での警備
部長から外務省や内閣でも経験を積まれた方のよう
です。

本書では、過去の大事件に対する同氏の冷静な分析
と知見に溢れています。

経験のみでなく、歴史上の事件も分析されています

同氏の著書には他に
 「まずい!!」学 組織はこうしてウソをつく
 組織行動の「まずい!!」学 
   ーーーーーどうして失敗が繰り返されるのか
 不祥事は財産だ
   ーーーーープラスに転じる組織行動の基本則 

などがあります。
アマゾンで中古で購入してとりあえずツンドク、
カットク、状態です (笑)

(こういう書籍は中古で買っても新書とほぼ変わら
ない状態でかなり安く買えることを再々経験してま
す)


本書のタイトルと内容には若干の違和感があります
が、それはともかくとして、今後も危機管理に関す
る感性を磨いていこうと思っています。




福島さんは「危機管理の落とし穴」は
どこにあるとお考えでしょうか。




ご意見をお聞かせいただければ嬉しいです。




最後まで読んでいただきありがとうございます。




福島さんの幸運な日々を祈念します。





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