【アモリ通信144:ヤマト正伝】  20180124 

福島清隆 さん

こんにちは。

キャッシュフローコーチ &
   リスクマネージャーの福島清隆です。
 
本日のテーマは「  ヤマト正伝  」です。
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 「ヤマト正伝」
 小倉昌男が遺したもの
 歴代経営者5人が明かしたもの
 守るべきもの、変えていくもの
 ヤマト、正念場!
 試される小倉イズム
 日経ビジネス編 日経BP社 本体1600円+税
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アモリ通信を熱心に読んでくださっている知人から
「小倉昌男」を取り上げて欲しいというリクエスト
がありました。
なかなかご期待にそえていなかったのですが、
とりあえず「買っとく、積んどく」本が
「ヤマト正伝」でした。
本書は、小倉昌男自身が著した書籍ではなく、歴代
の経営者を通して小倉昌男氏を語ったものです。

5人の経営者と本書の目次は以下の通りです
ヤマトホールディングス特別顧問 有富慶二
第1章  カリスマ経営者の背中
第2章  イノベーションは社長が起こす
ヤマトホールディングス相談役  瀬戸 薫
第3章  実践「サービスが先 利益は後」
第4章  「人の和」で組織を動かす
ヤマトホールディングス会長   木川 眞
第5章  第3のイノベーションを起こす
第6章  危機時に見せた「ヤマトは我なり」
ヤマトホールディングス社長   山内雅喜
第7章  やる気を引き出す360度評価
第8章  「あるべき姿」求めて規制と闘う
ヤマト運輸社長         長尾 裕
第9章  強いリーダーシップで「全員経営」
第10章 正念場 その先のヤマトグループへ

有富氏、瀬戸氏、木川氏はヤマトホールディングス
の社長、会長を歴任され、山内氏が現社長そして、
長尾氏がヤマト運輸の現社長ということのようです

まずは、肝心の「小倉昌男」の略歴を記します
1924年東京生まれ。
1947年東京大学経済学部卒業。
父、康臣の経営する大和運輸(現ヤマトホールディ
ングス)に入社。
1961年取締役、1971年社長、1987年
会長に就任。
1991年取締役相談役に就くも、1993年会社
の危機を唱え会長に復帰。
宅急便の開発で運輸省(現国土交通省)や郵政省
(現総務省)と闘った経験から、積極的な規制緩和
”実行者”としても知られ、行政改革審議会などの
委員も務めた。
また1993年、保有していたヤマト運輸の株式
300万株のうち200万株を投じてヤマト福祉財
団を設立。
1995年、再び会長を退任し、経営から一切身を
引く。
その後はヤマト福祉財団の理事長職に専念し、無報
酬で障がい者の自立支援に当たる。
2005年、逝去。
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それでは上記の5人の経営者が「小倉昌男」から学
んだポイントからいくつかをまとめてみます。

ヤマトホールディングス特別顧問 有富慶二
第1章  カリスマ経営者の背中
第2章  イノベーションは社長が起こす
・社長は63歳で引退せよ
 創業者の父、康臣氏が長く経営の座に就き、
 なかなかバトンタッチしなかったようです。
 小倉昌男が社長に就いた1971年、康臣氏は
 81歳とのこと。
 過去の成功体験にとらわれていた康臣氏は昌男氏
 の考え方になかなか首を縦に振らない。
 結果として大和運輸の経営は傾いていった。
 社長の判断ミスで会社を存亡の危機に直面させて
 はならない。そしてたどり着いたのが、社長の
 63歳定年制だったと思われる。
・既存の経営資源をイノベーションに生かせるか
 小倉昌男が役員会に提案した宅急便開発要綱の
 基本的な考え方
(一) 需要者の立場に立ってものを考える
(二) 永続的、発展的システムとして捉える
(三) 他より優れ、かつ均一的なサービスを保つ 
(四) 不特定多数の荷主または貨物を対象とする
(五) 徹底した合理化を図る
この中の(四)は業界の常識とかけ離れていた。
不特定多数の荷物は、郵便局か国鉄の小荷物として
扱うものと決まっていたから。
・小倉昌男がこだわった直間比率
 持ち株会社体制に変わる中で気を付けたのが
 間接部門の人件費だった。
 間接比率が高まると、人件費などのコストが高く
 なり、宅急便という商品そのものの価値が相対的
 に落ちてしまう。
 持ち株会社には事業会社の責任者を交代させる
 権限と、お金を出し入れする権限だけがあれば
 いい。そうしなければ間接部門が増殖してしまう
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ヤマトホールディングス相談役  瀬戸 薫
第3章  実践「サービスが先 利益は後」
第4章  「人の和」で組織を動かす
・小倉昌男の遺言「サービス第一」
 「サービスが先、利益は後」をさらに凝縮させた
 のが「サービス第一」
 「シンプルに言わないと我々のような業態はダメ
  なんだ」かって小倉さんから直接教えてもらっ
  た。
・仕組みが変われば会社が変わる
 「サービス第一」と並んで私が大事にしている
 言葉が「全員経営」
 大企業病に陥っていたので、小倉昌男が経営から
 退いていたが、会長に復帰した。
 「会社を良い循環に戻そう。その出発点はサービ
  スだ」会長はそう言っていた。
 大企業病から脱するために、意思決定の権限を
 現場におろすべきだと考えた。
 仕組みを変えれば一石二鳥どころか、一石三鳥の
 メリットを生み出せた。そして本来目指すべき
 「サービス第一」を実践できる環境が整った。
・企業には「社格」がある
 「人に人格があるように、会社には”社格」とい
 うものがある。これを高めなくてはならない」
 会長はこの言葉を繰り返していた。
 事故隠しを労働組合から指摘され、倫理にもとる
 行為で社格を貶めてはならない。それで相談役か
 ら会長に復帰した。
 「社長をやるということは、会社の中で演じるべ
 き一つの役に徹することだ」 会長のこの想いを
 歴代経営者が理解しているので、ヤマトグループ
 は全員で持続的な成長を目指せるのだと思う。
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ヤマトホールディングス会長   木川 眞
第5章  第3のイノベーションを起こす
第6章  危機時に見せた「ヤマトは我なり」
・ギャップのない社内風土
 銀行から転職してまず驚いたのは、外から見てい
 たヤマト運輸のイメージと、中に入って見た実態
 に、ほとんどギャップがなかったこと。
 「サービスが先、利益は後」という哲学は、経営
 層ばかりでなく、第一線の現場にも深く浸透して
 いた。
・イノベーターとコンダクター
 小倉さんには上記の両方が備わっていた。
 自分なりに小倉さんのイノベーションをまとめる
(1)オンリーワンの商品を生み出す
(2)ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み
   出す
(3)拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンに
   なる
(4)最終的にデファクトスタンダードとなる
イノベーションの後に、経営者に求められるのは
コンダクター。小倉さんは両方とも実践していた。
ヤマトグループには、イノベーションが生まれる経
営サイクルが根付いていった。常に新しいものを生
み出すマインドが染みついているから、小倉さんが
引退した後も成長を続けてこられた。
・危機時に思い浮かんだ小倉さんの英断
 1983年、スキー宅急便を始めた。
 大豪雪に見舞われ、荷物が配達できなかった。
 小倉さんは、宅急便の料金、スキー用品の代金、
 ホテル代、交通費をヤマト運輸が負担すると決断
 した。
 約2億5000万円というとてつもなく大きな
 金額だった。
 しかし、小倉さんのこの決断で、その後の日本に
 「手ぶら文化」が浸透したのは間違いありません
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残り4章は小見出し+αにします。
ヤマトホールディングス社長   山内雅喜
第7章  やる気を引き出す360度評価
第8章 「あるべき姿」求めて規制と闘う
(第7章)
・入社試験で問われた「論理性」
・「小倉イズム」を学んだ3度の機会
・収支よりも、お客様に喜ばれる商品作り
・お客様視点と現場視点
・第一線の社員がヤマトグループを担う
・「不在時に届けるヤマトが悪い」
・「評価」を変えて大企業病を乗り換える
・「うちにこんなものは、いらん!」
 「こんなホワイトカラーのための制度はうちには
 不要だ。ヤマト運輸の軸は、第一線でお客様に接
 するセールスドライバーで、それを支えるために
 事務作業の社員がいて、成り立っているんだ」
 「ホワイトカラーの上司が部下を評価する制度 
 があるから、上を見て仕事をする社員ばかりにな
 るんだ」
・「お客様に喜んでもらう」を評価に
・会社は「フルーツポンチ」だ
・「人柄」を評価項目の中心に
・セールスドライバーを正社員にする理由
 正社員として採用すれば福利厚生も含めてコスト
 はかかります。けれど、だからこそ良いサービス
 を提供してくれると小倉さんは信じていた。
・社員が幸せに働ける会社を作りたい
・評価の仕組みに正解はない
・健全な労働環境が揺らいでしまった
・一時金で示した経営の姿勢
・変わるべきものと変わるべからざるもの
(第8章)
・「社会的インフラ」の責任の重さ
・企業姿勢に盛り込んだ「障がい者支援」
・世論が味方をしてくれた
・闘う姿が現場を鼓舞した
・30年以上続いた「信書論争」に終止符
・小倉さんならどう判断するのか
・「いい競争で、いいサービスを。」
・小倉イズムに宿るロマン
 小倉さんは「より良い世の中を作る」という
 ロマンを抱いて宅急便事業をスタートしました
 
 「人々の生活をよりよくしたい」「世のため
 人のため」といったロマンは、その後の経営者
 にも引き継がれましたし、これからも伝えていか
 なくてはなりません。
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ヤマト運輸社長         長尾 裕
第9章  強いリーダーシップで「全員経営」
第10章 正念場 その先のヤマトグループへ
(第9章)
・社内報で学んだ小倉イズム
・シンプルな言葉が現場を動かす
・不都合なことと正面から向き合う
・現場を束ねるのは実行力
・セールスドライバーは「すし屋の職人」
 運転手には「すし屋の職人になってくれ」と呼び
 かけた。すし職人はカウンターの客と会話しなが
 らネタをすすめ、注文を受けてすしを握り、おあ
 いそうもする。
 多機能であり、職人のきっぷが良ければ店は繁盛
 する。
 いちいち上司の指示を仰いでいたら客は興ざめだ
 宅急便の運転手も同じ。だから、呼称も
 「セールスドライバー」に変えた。
・知恵を絞って、商売をする
・一人一人が経営者に
・時代は変わり、作業内容も変わっていく
・作業工程を抜本的に変える
・「全員経営」の意識を取り戻せ
・小倉さんがいないなら、みんなで分担すればいい
・ヤマトは人間好きの集まり
(第10章)
・「利益は後」は「利益不要」ではない
・オープン型宅配ロッカーは「サービスが先」
・大口の法人顧客との運賃交渉
・経営の軸を社員に据える
・社員の信頼を取り戻す
・基本運賃の改定に込めた思い
・決断がワンタイミング遅かった
・新たな運賃設定の仕組みを模索
・現場のマネジメント力を磨く
・「労働分配率を挙げなさい」
・新しいヤマトグループへ
 「サービスが先、利益は後」「全員経営」
 などの小倉イズムは、揺るぎないものだと確信
 しています。
 10年後、今回の改革を振り返って
 「あの時の決断は正解だった」と言われるように
 私たちが先頭にたたなくてはなりません。
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小倉昌男という経営者の名前は知っていましたが、
書籍を読んで特に学ぶということは今回が初めて
でした。
先週の「澤田秀雄」氏の場合もそうですが、一人の
優れた経営者でここまで企業は変わるものであるこ
とを今回も学びました。
そして「理念・哲学」が組織に染み込んでいれば、
当人がいなくなっても、組織は成長を続けることが
できる事をヤマトグループの場合は実証していると
思います。

私は基本的に物流業界に身をおいていましたが、
運輸業に関しては、「仕事をお願いする」立場の
方がウエイトが高い状況が多かったのが現実です。
そんな中、ヤマト運輸が宅急便事業を大きく育て、
逆に、某日本最大規模の物流会社が宅急便ビジネス
から撤退した現実の違いは何か?
「経営理念が組織に、社員に浸透していたか否か」
かなり気取った言い方かもしれませんが、最終的に
はやはり、それに尽きるように思います。
 
福島さんは「小倉昌男」という経営者が
「宅急便」「宅配便」を考案し、定着させたという
ことをご存じだったでしょうか。

小倉昌男のような経営者が現在でも通用すると思わ
れるでしょうか。
もちろん、私は通用すると思います。
 
ご意見をお聞かせいただければ嬉しいです。
 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
 
福島さんの幸運な日々を祈念します。
 
 
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